英語をもっと取り入れるようになったら「フランス語」は死語になる?

フランスと日本、都会と田舎、中上級階級と庶民など、さまざまなはざまで生きてきた境界人であるため、他の人と違う視点を持った著述家として活動しています。コラム執筆などの依頼も請け負っております。

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プーさん フランスの日常
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最近の、フランス人の会話を聞いていると

トゥモローよ。」

メールの出だしが、

「Hello!」

なんていう風に英語の単語が紛れるようになってきました。
とは言っても、フランス語訛りで、違和感を感じなくもないのですが(笑)

あんなにフランス語に固執してきた国だと言うのに、

英語は急速にフランス社会を侵食しています。

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英語に押される「現実」

日本にいて散々「英語、英語」と言われてきたけど、、
最近はフランスでも「英語、英語が必要よ」と言われるようになってきました。

フランスに居てもやっぱり「英語」かよ。と思わずに居られない。

だって、日本と状況が違いすぎる。

日本語は、他の国では話されてなく、かなり、マイナーな言語。

なので、

「英語は、海外に進出するのに絶対必要」

だったからこそ、英語を学ぶことが推奨されてきました。

でもフランスは、昔は世界的に勢力があったのでどこでもフランス語で押し通してきたのです。

例えばオリンピックにしても、世界的なスポーツ大会を開催する事をフランスのクーベルタン男爵が提案したため、オリンピックの公式言語がフランス語と英語になりました。

また、世界各地に植民地を作りフランス語圏を広げていき、そうやってフランス語だけしか知らなくても生きていけるような場所を創りあげていったのです。

その挙句「歴史がない」やら、「宗教が違う」やらと、
英語圏の国々をあからさまに否定してきたのが、この始末・・・

学生がフランスに来て勉強し、フランス語を学んでそれぞれの国に帰ることは、フランス語を話せる人の数を増やすことで、更にフランス語の地位を強固なものにするためとても重要なこと。

水準の高い教育、そして「花の都」の魅力、それが強いフランスを象徴してきました。
フランス語をしゃべることは「カッコイイ」、あこがれてフランスにやってくる学生が多かった。

でも、そんな時代も遠い昔の話。

今は、どんどん留学生が減少。

まあ、日本も不景気でアメリカに留学する学生の人数が減ったということなので、これは世界的なことかもしれません。

そこで、フランスは外国人の留学生を増やすために「大学で英語による授業」を検討し始めました。

それでもフランスは、アフリカにもフランス語が公用語の国も多いし、そこからの留学生も結構来るのでは?とも思いますが、

 しかしながら、モリエールの言葉[フランス語――訳注]は、29もの国で公用語とされている(シェークスピアの言葉は56か国である)。そして、フランス語話者の数は、アフリカを中心に増加し続けている。しかし、アフリカの学生に課される障害物競走のように面倒な留学手続きから判断するならば、アフリカの学生はフランスが招致したい存在ではないようだ。アフリカの学生はあまり裕福ではないので、商業専門学校や工業専門学校(注1)の(時には高額ともなる)授業料を納められるとは考えにくいからだろう
英語を世界の統一言語にしてはならない

現実問題、来てもらいたいのは、「裕福な国」な学生。

「裕福な国」=母国語が英語もしくは、
=教育水準が高い国→外国語として英語を押している。

まあ、経済的な理由が大きいということでしょう。

「大学で英語による授業」については、今でも大きな議論を呼んでます。

でも、実際、大学で英語の授業になった方が、留学生も敷居が低くなるし、
フランス人自身のスキルアップにも繋がる。

そう考えると、今まで強固に守りすぎたフランス語の枠がフランス国内で緩和されるのは、フランスの良き時代を見てきた人達には受け入れがたい事実かもしれませんが、今後のフランスの成長のためには悪いことではない気がします。

プーさんにみる、日・仏の英語の翻訳比較

フランス語へのこだわりは、プーさんの絵本からも感じることができます(笑)

息子が小さい時に、「クマのプーさん」の日本語版を読み聞かせしていたところ

「S」が左右反対に書かれていました。

プーさんS反対

背表紙に書かれた説明をみると

プーさん 絵本

「この絵本に出てくる英語のつづりに、まちがって書かれたものがあります。これは、物語にでてくるクリストファーや動物たちの知識がまだ浅く、正しい文字が書けない年齢であることを、ユーモラスに表現しているものです。よろしくご了承くださいますよう。」

と説明書きがされています。

この年代の子供達は、確かにまだ文字を反対に書くこともあるし、作者による絵本の中の世界が尊重されているようで、

こういう配慮って、見ていて「ほのぼの」するな

と思っていたら。。。

義母出現。

「あら、Sが反対だわ。。(* ̄ ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄ ̄)フッ」
「えっと、元の英語の本が反対だから、そのまま使ってるのですよ。」
「まぁ~ど~かしら~」

要するに、日本人はアルファベットを書けないので、間違えて書いたと思ったらしい。

( ̄□ ̄;)ギョ

そんなこと思う方が、こちらとしては不思議・・・・。

ちなみに、英語版の同じストーリーの本をもっています。

英語版 プーさん

そこにも、
プーさん 英語版

確かに「S」が反対に書かれていました。

世界的に有名なプーさん。翻訳する時って文字は訳されるけど、絵には手を加えないのが普通なのでは?

と思ったのですが、

同じストーリーのフランス語版のプーさんの絵本を見てみました。

プーさん フランス語版

それを見ると。。

プーさんの文字が。。

Winnie l’Ourson

ってフランス語名が書かれてる。
それも不自然な加工処理で、違和感を覚える・・

これは、あかん・・・

なんでもかんでもフランス語に書き直さなくたっていいじゃん。。。フランス語にこだわりすぎて、絵本の世界をすっかり壊してしまっているような残念感を感じたのでした。。。

いろんなフランス語の規制が緩和され、英語を話すことが身近なれば、こういったように挿絵に英語が書かれていることも受け入れやすくなるかもしれないとも思うのですが、どうでしょうか?

文化である自分たちの言語を守った上での融合

「大学で英語による授業」は、いろいろ議論を呼んでいるのですが、その理由の一つがこれ。

「わが国の大学に英語の導入を許し、(英語で)科学や現代世界を教えれば、フランス語は破壊され、貧しいものになってしまうだろう。フランス語がありきたりな言語か、あるいは最悪の場合は死語になってしまうかもしれない」
大学で英語による授業を拡大する法案、フランスで激論

以前よりフランス語の勢力も落ちるとは思うけれども、日本語や他の国を見ても「死語」にはならないでしょう。
大学内での授業であり、一般の人はそこまで影響はないのだから。

でも、確かに

ニュースなどで外国語を多様しすぎるのは良くない。

↓もしそうなれば、フランスでも下記のような問題は必ず発生すると思われます。

 テレビ番組で理解できない外国語が多く精神的苦痛を負ったとして、岐阜県可児市の元公務員で、「日本語を大切にする会」世話人の高橋鵬二さん(71)が25日、NHKに対し141万円の慰謝料を求める訴えを名古屋地裁に起こした。

訴状などによると、高橋さんはNHKと受信契約を結び、番組を見ているが、必要がない場合でも外国語が乱用されていると主張。例として「リスク」「ケア」「トラブル」「コンシェルジュ(総合案内係)」などを挙げ、「不必要な精神的苦痛を与える」として、民法709条の不法行為に当たるとしている。

高橋さんは「若い世代は分かるかもしれないが、年配者は、アスリートとかコンプライアンスとか言われても分からない。

外国語多く苦痛 岐阜の男性がNHK提訴

まあ、訴訟おこしたくなる気持ちもわからないでもない(笑)

最近の日本語には、ほんとによく解らないカタカナ文字が多い。
「リスク」「ケア」「トラブル」までは許せるけど、「コンシェルジュ」は「総合案内係」でいいんじゃないか?

フランスほどの厳しいガイドラインは必要ないとしても、公共の電波で流す言葉に関しては、日本でもある程度ルールを定めた方がいいんじゃないかしら?

確かに、言葉は時代によって変化はしていくもの。でも、

言葉は文化

英語を推進するのもいいけれども、日本人が聞いても意味が解らない日本語や、フランス人が聞いても解らないフランス語になることは防いでもらいたいものです。

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