ADHDのことはご存知でしょうか?
最近では、日本ではニュースで説明がなされるなど、認知度が上がって来た発達障害です。
注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかん・たどうせいしょうがい、英: attention deficit hyperactivity disorder、ADHD)は、多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする発達障害もしくは行動障害である
注意欠陥・多動性障害
アメリカでは、子供の9%がADHDと言われています。
日本では、2012年の厚生省の調べでは6.5%と言う数値が。
なのに、なんとフランスでは、
たったの0.5%!!!
フランスには、どうしてADHDがほとんど居ないの?
それはどうしてなの?
気になったので調べてみました♪
ADHDがいないフランスの理由
2012年に、アメリカで
「どうしてフランスにはADHDが居ないのか?」
Why French Kids Don’t Have ADHD
https://www.psychologytoday.com/
と言う記事が紹介されました。
この記事を書いたマリリン·ウェッジ博士Marilyn Wedge, Ph.D.は、子供に精神的障害と決めつけず、投薬を行うことなく、子供本位になることで解決するファミリーセラピーを行っている先生だそうです。
フランスのADHDが0.5%であると言う数値は、その記事から持ってきたのですが、ほんとに驚きの数値です。
記事の中で、その理由をこう書いています。
アメリカでは、DSMという基準システムを使っているが、フランスの精神医学会はこのDMSに対抗して、CFMTEAというシステムを作った。
アメリカのDSMは、薬の処方と症状の軽減を目指すシステムだが、フランスのCFMTEAは子供の症状から心理学的な原因を探るものとなっている。
まず、フランスは、アメリカや日本と違って、DSMと言う基準ではADHDを判断していないようです。
フランスでは、今でもADHDは生活環境などの影響によってその症状が出ていると考える研究者が多く、投薬に頼らず環境整備やカウンセリングによって治療する。
そのため長い期間をかけて、よくよく観察しながら最終的な判断を下そうとする。結果、フランスでは子供を安易にはADHDとして判断しない。
生活環境によって症状がでる?う~ん。。。。
まあとにかくよく観察して、時間をかけて判断を下すようなので、安易には診断されないようです。
またフランスとアメリカでは子育てに対して非常に違う哲学がある。それらの相違する哲学はなぜフランス人の子供らはアメリカの子供に比べて行儀がいいのかと言う主な理由であり、この躾スタイルの違いは、なぜフランスの子供達ADHDの割合がアメリカに比べて少ないのかに関連があると信じている。
フランスの子供は決められた型や構造にあてはめて躾される。例えば、一日の食事は4回と躾けられ、間食をしないで食事を辛抱強く待つことを学ぶ。赤ちゃんが4か月でまだ夜一晩寝る時は、そのまま泣かしておく。
フランス人の両親達には、規律への哲学がある。一貫した強制的な制限を与えることや、明快な制限は、子供がより幸せと安全を感じると信じられている。よって、フランス人両親はよく「ノー」と言ったり「おしりを叩く」ことをするが、これは「わがままによる横暴な振る舞い」から子供達を救うと信じられているから。
このように、セラピストのように子供に働きかけることは、フランスの子供達は彼らの行動を薬でコントロールしなくていいと言う事。なぜなら彼らは生活の中で、自己コントロールを学んでいるからです。
と、言う事なのですが。。。。
・・・
この文を読む限り、フランス人は、食品添加物を取らない食事がよく、躾がいいからADHDが少ないと言う解釈もできますが、それはほんとでしょうか?
ADHDに関する論争を見てみると、食事や薬による影響が論争されてきましたが、今だにはっきりとした結論は出ていないように見えます。一応、2007年の時点で、前頭前皮質における脳の発達の違いであると確認できてるようですが、合成着色料やその他の添加物に対しての疑いはまだ拭いきれてはないようです。
が、躾に関してですが、それは現在では関連性がないことははっきりしています。
ADHDは発達特性に起因するものであり、育て方やしつけが原因となることはありません。ただし、接し方や育て方が症状に影響を与えることはあります。
ADHDの特性を理解しないままに、ただしつけを厳しくしても、症状を改善することはできません。ADHDの子どもの多くは、こうしなければいけない、これをしてはいけないといったことはわかってはいますが、刻々と変化する外部の刺激に飲み込まれて、どのように実行していくかを自分で計画することが困難です。そのために、環境設定と具体的な指示が必要であり、結果がうまくいけばしっかりとほめることが大切なのです。
http://adhd.co.jp
一般の家庭で行われている躾で厳しくすれば症状が改善するものではないのです。だいたいその自己コントロールがうまくできないから悩んでいるんであって。
しかし適切な対応をすれば、ADHDが持つ特有の問題点を本人がカバーできる術を身につけれるようになるのは確かで、それは専門家による指導がなければ難しい点も多く、一般の人が思っている範囲の躾でカバーできるものではないということ。とにかく褒めて成功体験にして肯定していくことが大切だと言われています。
そう考えると、フランスの躾は「ノー」とか「おしりを叩く」とかで、褒める躾ではなさそうですが。。
と言う事でこの記事には疑問に思う点が多く、それは他の読者もそう考えたのか、この記事に対して複数の反論記事が出ました。
フランスにADHDの診断を受けた人が少ない本当の理由
その一つがこれ。
「はい、もちろんフランスの子供達もADHDの子が居ますよ」
Oui Oui French Kids Have ADHD
http://www.mythreeaspies.com/
この記事では、的確にフランスの問題点が挙げられています。
そうなんですよ。まず、基準が違いすぎるんですね。
これはほんとにそうかもしれません。。都会ではないかもしれませんが、ulalaの住む田舎ではありえそうな気もしてきます。
例えば、こんなことがありました。
フランスでは、小学校までは子供のお迎えが必須ですが、ulala家の学校ではCM2になれば学校に届け出すれば親が来なくても門から出れます。
なので、学校の近くに住む男の子が、母親が生まれたばかりの赤ちゃんを世話していて大変なので、1人で家まで帰っていたのですが、毎日子供が一人で歩いている姿を見て、「親が怠慢している」と思う親達が続出。
「あそこの母親は基地外だわ。子供をあんな風にほおっておいて」
と、そこら中で非難の嵐。結局、そのお子さんは、パリに居る離婚した父親の方に引き取られることになりました。1人で下校なんて、日本では当たり前なのに・・・
それこそ、ソーシャルワーカーに通報されそうになったのではないかと思われます。うそのような話ですが、実際にあった出来事です。
田舎って怖いな。。。しかも、フランスの70%は田舎って事実・・・
そして、自閉症を含む、発達障害に関してはフランスは先進諸国と比べてかなり遅れていて、「育て方・親の責任」と思われていることが多いのです。ADHDと診断されることは「親の躾が悪いから子供に悪影響を与えてる」と思われることに繋がるとしたら。。。診断されるのを拒否したくなる気持ちも分かります。
しかも、フランスの怖いところは、そういった「育て方・親の責任」誤解は一般の人々に留まってないと言うこと。実際に医者もそう思っている人が多かったのも驚きの真実。
ここで、出てくる「Le MUR」と言うフィルムは
「どうしてフランスやスイスやベルギーなどのフランス語圏で、自閉症の対応が40年は遅れているか」
と言うことを追ったドキュメンタリーです。
下記で一部見ることができますが、
「自閉症はお腹に子供がいる時に、母親がくよくよ悩んだから」
「出産後、ベビーブルーに母親がなれば、自閉症にもなるわよ」
と言ったことが、一般人ではなく、ほんとに医者が言っていることが解ります。
LE MUR ou la psychanalyse a l’épreuve de l’autisme
フランスでは自閉症は精神的な物であり、親の対応が原因の一つであると言う考えがまだ人々の間にも残っていました。
また、フランスでは行動療法が一般的ではなく、行動治療を受けれない多くのフランス人の自閉症患者はベルギーに行かなければ、適切な治療を受けることができませんでした。
日本の医師もその事には驚いていたようです。
私は唖然としました。当時(2008年)、日本ではすでに心因論的な考え方を支持する人はほとんどいなく、生物学的な研究が非常に活発になっていたからです。認知行動療法なども導入された時期だったからです。
http://www.fukushishimbun.co.jp/
同様に、発達障害に関することも認識が遅れており、様々に起こる問題はすべて「親が正しい教育ができてないから」だと今まだに思われていることが、すべて正しい診断結果を得る妨げになっていることと、行動療法についての理解が無かったため必要なケアをできる機関も一般的にはなかったようです。
現在、フランスではどうなっているのか?
しかし、フランスがADHD等で遅れていることは事実ですが、もちろんなにもしてない訳ではありません。
このように国による統一の基準がないよな問題に対しては、フランスでは必ず民間協会(アソシエーション)が発足します。その中で勉強会や情報を交換し合い、その中に参加する医者も独自に知識を身に着け対応してきたことも事実。真剣に研究してきた人々による、様々な書籍も出ています。
このことにより、一般の人はまだまだ知識が無いものの、関わりのある人はちゃんと知識を持って対策を練ってきたのです。
また、フランスでは周りの理解を得ることが難しい状態の中、心理からのアプローチで「自己理解」を高めることに時間がかけられてきました。
長い期間かけて行われる診察の中で、「抑えられない衝動を抑えるためにどう気をそらすか」など、「自分から社会に歩み寄る方法」を学んだりしているようです。
こういった内容は、手探りで解決策を考えていく結果、他の国と同様にADHDの問題を回避する方法を学ぶと言う点にたどり着いているようにも思えます。
l’Association de patients HyperSupers.
http://www.tdah-france.fr/
(ADHD=フランス語でTDAH)
現在でも、多様な情報がこの協会から発信されています。
そして、ここで、な、なんと、
ようやくフランスの高等保健機構(Haute Autorité de Sante, HAS)がこの問題の改善にむけて腰をあげることに。
ADSD ようやくフランスが前進する(少しづつ)
TDAH, hyperactivité : enfin, la France avance (doucement)
http://www.sciencesetavenir.fr
2015年1月12日にやっと
診断の基準や、医者への教育、ケアを含めて推進していくことを決定しました。投薬についても、もっと検討されるようです。
今後、少しづつですがフランスでもいろんな方向からの支援も増えて行くことでしょう。
結論
フランスは、ADHDが少ない訳ではありません。躾がいいから居なかったわけではありません。今まで認知度が低かっただけなのです。
フランスの子供期は2014年から調査を進めているフランスの高等保健機構がに出した数*1によると、フランスの子供期のADHDは
3.5%から5.6%
と言う事。
0.5%ではなかったのですね~。
公的機関がこうしたちゃんとした世界と比較できる値を出すことも、フランスにとってはADHD対応に向けての大きな一歩。
まだ始まったばかりなのです。
マンガと豊富なイラストで、ADHDの症状・原因・対応策がわかりやすい。ADHDの子どもの発達時期(幼児期から小中高、大学生、大人まで)に応じた対応策、つきあい方の作戦が充実。ADHDの子ども&大人、本人が読むアドバイスのページつき。症例だけでなく、治療例も年齢別に紹介。