フランスに来てまだ子供も居ないとき、
「どうしてフランスにまで来て、日本語を教えなくちゃいけないんだろうか?」
と単純に思ってました。
だって、駐在の方なら日本の学校に戻ることは決まっているのだから、日本語を必死に勉強し続けなくてはいけないと思いますが、フランスで生まれた子供が日本語を覚える意義って?
その後、いろんな方に出会い世間話しからお子さんの話を聞き、日本語を教える家庭と、教えない家庭があることがわかりました。
でも、圧倒的に多少でも日本語を教えている家庭が多く、お子さんに日本語を教えてこなかったとしても、その方達は後悔していることが多いんです。
こんな方もいました。
「今、娘は中学生で日本語を教えてこなかったけど、娘が日本語が話せないことを悔やんでて、なんで教えてくれなかったのって言うのよ。私だって必死でフランス語覚えたんだから、あなたも自分で頑張りなさいって言ってるけどね(笑)。。。でも、、、、あなたはできるならぜひ教えた方がいいと思うわ。」
その後も口々にいろんなところで
「子供には日本語を教えた方がいいわ」
と言われ続けたのです。
そこでハッキリした理由は自分の中になかったものの、その先輩とも言える経験者たちの教えの通り、子供が生まれた時には完璧ではないけど、少しづつでも日本語を教え続けてきました。周りに日本人もほとんどいないし、日本語学校ももちろんないので、それはそれはとても大変でした。
しかし、子供がある程度大きくなり、フランス在住歴も長くなりいろんなことが見えてきた今なら、
はっきりと、フランスに生まれた子供に日本語を教える意義や理由が理解できます。
ということで、私も声を大にして言いたいと思います。
「外国で子供が生まれても、ぜひ日本語を教えるべき!」
日本語は、フランスに居たら親がしゃべっているからと言って自然には身に付きません。
やはり、教えてもらわないと上達はしないのです。
そこで、私が感じる「フランス(海外)で子供に日本語を教えるべき5つの理由」を書き残しておきたいと思います。
一部、フランス特有なこともありますが、全体的には海外に住む方すべてにあてはまる内容です。ぜひ一読ください。
フランスで子供に日本語を教えるべき5つの理由
子供に日本語を教えて、最初に「あ~よかった♪」と思える時は、日本の実家に帰った時ではないでしょうか?
まずは、それが最初の出発点。
1.日本語を教えるのは日本の祖父母のため
フランスに居たとしても、日本にご両親が健在な場合は、お子さんを連れて里帰りをするでしょう。
実家に帰ると、祖父母は赤ちゃんの時は見ただけで喜んでくれます。帰ったかいがあると言うものです。
ですが、年齢がどんどん上がっていくとそうはいきません。
祖父母もお子さんも、言葉のキャッチボールができないとコミュニケーションがうまく取れず不便なことも増えてきます。
あなたに日本に兄弟がいるならば
「○○の子供はちゃんと日本語で答えてくれるからかわいいわ。」
「もうちょっとなんとか日本語話せるようにならないかしら」
そんな言葉が投げかけられて、悲しくなる時があるかもしれません。
でも言葉のキャッチボールができないおじいちゃんおばあちゃんだって悲しい。もっと孫と楽しく過ごしたいのに。
だから、少しでも日本語が話せるように、少しでもコミュニケーションが取れるように、お子さんに日本語を教えてあげてください。
日本に帰国した時の、みんなの笑顔が増えますよ(^^♪
そして、楽しい経験をした子供達も、日本に対して好印象を持つことになるでしょう。
2.日本語を教えるのは子供の自身のため。彼らのアイデンティティを守るため
なんの問題なく日本語を教えていく家庭もありますが、中には日本に戻ることはもうないし、必要ないので教えていないと言う方もおります。
日本には身内もいなかったり、中には日本に対してあまりいい印象を持ってなかったのでフランスに来たので、特に日本語を教えてないと言う人も。
確かに、あなたはそれでいいと思います。
日本に阻害されたからこそ、日本に関わらないようにし
「私はフランス人。日本はクソだ」
と思っているのだとしても、それであなた自身が救われるなら、それでいいと思います。
生きていくためには、自分が幸福であることは必要であると思いますから。
でも、
でもですね、
あなたとお子さんは違います。
お子さんはフランスで生まれて、育ったとしても、
親御さんが日本人である限り、
お子さんはお子さん自身のアイデンティティである日本を肯定することがとても大切なことなんです。
なぜなら、それがお子さんのルーツだからです。
外見を見ても、ハーフのお子さんの中にはすごいフランス人っぽい人も中にはいますが、大抵の人は外見も完璧なフランス人ではありません。もちろん、両親が二人とも日本人なら外見は完全にアジア人ではないでしょうか。
まったく問題がない場合はそれでいいのです。でも、道徳的教育が家庭でされるフランスは、家庭によってモラルの差が大変激しいです。
もしかしたら、心無いフランス人の子供達に学校で外見で差別されるかもしれません。
「おまえは中国人だから汚い。」
「チンチョンチャン」(日本人を含む東洋人、ことに中国人に対する蔑称)
「シノワー」(中国人のフランス語)
何も日本のことを知らないお子さんが、こんなことを言われて落ち込んで帰ってきたらどうしますか?
まず、中国と日本は別の国であるのにもかかわらず、フランス人はアジア=中国と思っている人もいて、顔がアジア系なら中国人と呼ばれる。
それでもって、慣習的に中国に持たれているイメージ、汚い、偽物が多い、差別してもいい対象と言うようなことを、そのままお子さんにダイレクトに投げかけられるのです。
もし、お子さんが日本に対する正しい知識がなければ、そういったからかいの言葉に対して反論できないどころか、自分のルーツはひどい国=自分はよくないという意識が植え付けられるかもしれません。それはずっと劣等感として残ってしまいます。
ただでさえ、自信を持つことが求められるフランスで、劣等感を持っているお子さんはが、うまく社会で戦っていけるでしょうか?
答えはノーです。
自分を肯定するためにも、自分の出身国のことを知り、言語を知り、からかわれても胸を張って正しいことを説明できることが大切です。
そのためにも、日本のことについて教える。文化を教える。日本語を教えてあげて欲しいのです。
3.日本語を教えるのは、高校卒業試験バカロレアの平均点アップに繋げるため、就職に有利にするため
フランスの高校卒業試験であるバカロレアでは、日本語を高校で受けた授業の一単位としてテストを受けることができます。
まあ、大抵は第一外国語LV1は英語を選択する人も多いと思いますが、日本語を第一外国語としても試験を受けることができます。
そして、もちろん第一外国語は英語にしても、日本語を第二外国語LV2として筆記、口頭試験で日本語のテストを受けることも可能。
また、それほど日本語が得意ではなくても、オプションとして口頭試験のみの第3外国語LV3として日本語として受けることも可能です。
LV1、LV2で日本語を選択するには、やはり日本語学科がある高校に通うぐらいじゃないと難しいと思いますが、LV3なら、日本語学科がなくてもCNEDの通信教育で受けることができます。費用も通常は高校持ち。
第3外国語は、普通の生徒は受けないオプション科目であり、悪い点なら考慮されないので問題ないし、良い点ならコーエフィション2と二つ分のテストとしてカウントされますしやってみる価値はあると思いますよ。
だからこそ、バカロレアの平均点を上げるためにも、日本語は勉強しておいてもまったく損はありません(^^♪
また、就職する時にも、他の人ができない能力があれば、有利になるかもしれません。
日本語を学ぶことは、やはり他人と違う個人の秀でた能力として、立派に履歴書にも書くことができます。
最近は中国語に押されぎみですが、反対に言えば、日本語を話せる人材は数少なく貴重。
いざ、どこかに就職しようと思っておも、個人のオリジナリティをアピールする必要があります。
そんな時に、日本に関係ある会社なら「日本語がしゃべれます」は、大きいなアピールポイントとなるでしょう。失業率の高いフランス。少しでも、子供のアピールポイントを増やしませんか?
4.日本語を教えるのは、子供が大きくなっても親子関係を維持するため
以前、こんなコメントをいただいたことがあります。
「日本人夫婦のお子さん二人の教育を英語だけでおこなった結果、
Native Englishを話す成長したお子さんたちからご両親はバカにされ、
また年老いた日本の祖父母との会話もままならない現状に、非常に後悔されておりました・・・」
お子さんも家に居る間は、アウンの呼吸でつたない言葉を話してもうまくいっていた関係も、思春期頃から徐々に変わりはじめ、子供が家から巣立ち、環境が一変すればもっと違ってきます。
お子さんも立派なフランス人社会で生きるフランス人となっていくのです。
そうなるとネイティブの様に話せない両親にイライラしたり、恥ずかしいと思う時が来るかもしれません。
そんな時、お子さんが日本語や日本の文化を知っていることはとても大切です。
フランスで育ったお子さんが、日本と言う国を肯定的に見れるかどうかは、将来の親子関係にも影響してくることは間違いありません。
5. 日本語を教えるのは、老いた後の自分のため
あなたは知ってましたか?
老いれば老いるほど、後付けされた言語は頭から無くなるってことを。
もちろん、個人によって違うとは言えますが、高齢になり痴ほうが始まると、母国語は覚えているのに、大人になってから覚えた外国語は忘れてしまってしゃべれなくなってしまう例が世界中で見られています。
高齢で施設に入っても、痴呆とともに現地語を全部忘れて、施設の人とも、子ども達ともコミュニケーションが取れなくなってしまう。これほど悲しいことはないのではないでしょうか。
そんな時、誰か、自分の話す日本語を理解してくれる人がいれば、それほどありがたいことはありません。ましてやそれが身内であり、身近にいてくれるお子さんとなれば尚更のことです。
毎日お仕事やなんやらで大変だと思いますが、ぜひお子さんに日本語を教える努力は忘れないでいたいものです。
それは、海外で余生を送るかもしれない、
あなたのためでもあるからです。
「アメリカに住む日本人シニアがボケて日本語しか喋らなくなり、英語しか分からない自分の子供とコミュニケーションが取れなくなる」
という話、皆さん聞いたことありますか?最近私、よく聞くんですよ。年取ってから起こる言語の原点回帰というか、英語を失くして日本語しか喋らなくなるんですね。
— Hiroyuki Takenaga (@nynuts) 2016年11月3日
これは本当。お若い頃に日本に来られて、以降70年近く日本で家庭を持ち生活して来られたのに、認知症になられて以降、夕方になると母国語しか理解できなくなってしまう方がいらっしゃいました。母国語(しかもその地方の方言)ができるヘルパーさんを探すのに苦労しました。 https://t.co/065TXX6mbL
— あめちゃん (@amechan_3) 2016年11月4日
私の義祖母は在仏70年以上のオーストリア人ですが、認知症になりドイツ語しか話さなくなり、介護のフランス人たちを困らせているそうです。 https://t.co/m4K7tV9nEw
— Maho Mizoguchi Stelz (@MMizoguchiStelz) 2016年11月4日
ありますよ。かつて私もTwitterかブログに書きました。親類のおばさんはそのためのヴォランティアしてました。彼女は米国生まれで英語が母語ですが日本の女子大も出ているので日本語も堪能。歳とったら英語なんか話すのが面倒(不可能)になった老人を施設に訪問して話し相手になってました。 https://t.co/y99ncHZ3rH
— 聖書学のマルクス博士はリア貧の辻音楽師 (@MarkWatermanPhD) 2016年11月4日
新しい記憶から壊れて行きますから、最後に残るのは生まれ育った幼年期の言葉ですね。地方出身の人は方言になりますよ。 https://t.co/91snRqIMuX
— TurtleUK@次は横浜OLC大会 (@turtle24uk) 2016年11月4日
日本語を子供に教えるのに助けになる教材
と言っても、やっぱりいろいろ大変なんですよね。
近くに日本語学校があれば楽ですが、家で教えるとなると、親の強い意志と努力がなければできません。日本語学校にしろ、金額が高くて続けるのも大変な場合もあります。
海外で子供に日本語を教えることは、一つの大きな選択だと言ってもいいかと思います。
お仕事されている方もいるし、学校からの宿題も多いし、学校に行っている間は毎日は無理。
でも、フランスの何回もあって長いバカンスに集中的にやるだけでも、何年も続ければ全然違います。完璧じゃなくても、ペラペラじゃなくてもいい。できれば小学4年生の漢字ぐらいまでを目指して前進してみるぐらいで頑張ってみてください。
学校に行かず、ご自宅で日本語を勉強するのにいいかも?思った日本語教材の例を挙げておきますので、ご参考まで。
かるた
まず、日本語はひらがなから学び始めると思いますが、その時に心強いのがかるた。
最初は読み札の裏側に、取るカードの平仮名を書いておくと、子供はそれを見比べてカードが取れます。
慣れてきたら、裏側の平仮名は隠して、読み上げるだけで取れるようにしていくといいですよ。
うちは、これで、平仮名完璧になりました。
ここで、大切なのはかるたの選び方。
なるべく、よく使う文書が入っているかるたを選んでください。
言葉と言うのは頭の中に単語のデーターベースができないと話せるようになりません。何回も読み上げて、聞いたことがあるという言葉を増やすようにした方がいいと思います。
七田式(しちだ)プリント
ひらがなを覚えたら、「七田式(しちだ)プリント」
毎日一枚づつして、10か月で終わる教材。
日本の教材はさすがとしか思えません。子供が無理なく勉強できるように、少しずつレベルがあがる感じにすすみ、しかも何回も同じ単語がでてくるので、反復して覚えられます。ぜひ、おすすめしたい一押しの教材です。進度に合わせて教材を使えますし、小学校編でも無理なく漢字も覚えられるので、とても使いやすい教材です。
『七田式プリント』の特長は、右脳と左脳の脳力を基礎学力と同時にUPさせることができることです。七田式プリントは、「ちえ・もじ・かず」の3つの分野から幼児期に必要な知識を学び、1日各1枚、10か月間のカリキュラムで確かな基礎学力を着実に育てます。
ただ、そこまで日本語を本格的に習っていないと、小学2年生ぐらいから、なかなか難しくなってくるのが難点。そこまではがんばれなくてどうしようと思っても心配しないでください。みんなそうですから。
あとがき
数々の先輩方の中には、日本語はまったく教えなくてもうまく子供は育っていきましたと言う人もおられるかもしれません。がんばってこられた方達はとても素晴らしいと思います。
でも、そういう方でも、やはり自分では意識しなくても、日本のことを教えておられたのではないかとも思います。ちょっとしたルーツの話しが子供が成長する中で、どこかで支えにもなったのではないかと。。。あくまで想像の範囲ですが。
上記の5つの中で、特に一番大事なのは何かと聞かれたら、やはり、2項目のアイデンティティを守るためが一番大事だと思います。
特にフランスでは、この部分は一番気を付けてほしい部分。
第一次世界大戦以降、人口が急激に減少したフランスは、積極的に移民の受入れを行ってきました。特に、第二次世界大戦後、には、安価で大量の労働力が必要となり、炭坑や自動車工業の労働者としてスペイン、ポルトガル、マグレブ等から大量の外国人労働者の受入れを行いました。
ヨーロッパからの移民は、外見も似ておりすぐにフランス人と同等の扱いを受けました。しかし、旧植民地から来た移民は、フランスに溶け込むことが難しいと判断され、最初は男性独身者のみ、短期労働でしか受け入れない方針が取られました。
すでにこの時点で明確に区分けされたのです。
もともとあった差別もあり、区別されることは普通とされてたのです。
その上フランスは、フランス国籍を持つようになってきた移民達にもルーツとなる祖国の習慣を捨て、完全にフランスの習慣に従うこと「同化」を要求します。
イギリスやオランダのように、異なる文化背景、価値観や行動様式を持ったコミュニティ(エスニック集団)として受け入れるのではなく、アイデンティティを否定する形。
移民2世と言うのは、外国人としてフランスに来た1世とは違い、フランスで生まれ、フランス語はネイティブ、フランス人と同じ行動し、同じ勉強することになります。
でも、学校でも差別される。就職でも差別される。その上、自分のルーツを否定される。
そういった状態が健全なはずがありません。
苦しい立場に置かれた移民達。自分達は、一体何者であるのか。いろんなことに悩んでいきました。その後は、現在起こっている暴動やテロに繋がっていったのです。
暴動などを通して訴えられてきたことは、「自らの出自文化を保持したまま」、フランス社会で生きようとする考え方は大切であること。
最近では理解ある人には周知されるようにもなってきてもいます。
自分のルーツを大切にする。
だいたい自分の基礎となる根っこがしっかりしていなければ、伸び伸びと成長できません。
だからこそそのためにもお子さんには、日本語を通して、自身のルーツである日本が素晴らしいことをぜひ伝えてあげて欲しいと思うのです。
大変だとは思いますが、少しでもできるだけで、それだけでいいと思います。
ぜひ、お子さんのために、少しだけ頑張ってあげてください!
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